福利厚生制度のうち法定福利は社会保険各法によって規定されています
よく言われる、福利厚生制度には、法律によって規定され行うことが義務づけられた法定福利厚生と、それ以外である法定外福利とがあります。
法定福利厚生は事業主が社会保険へ加入し保険料を負担することです。
それぞれの保険の社会保険負担料は各社会保険法によって規定されています。
また、もう一方の法定外福利厚生も法律と無関係なわけではありません。
例えば、均等法による差別禁止規定や、労働法での社内預金や寄宿舎などについての規制など、法規制がいくつかあります。
したがって、それぞれの企業では、こういった法律による規定に従って、その範囲内で福利厚生を実施しなければなりません。
法定福利に関する規定
ここでは法定福利でまず挙げられる健康保険の規定について見ていきましょう。
給料から天引きされる社会保険料が上がってがっくりすることがありますが、この割合は会社が決めているわけではありません。
法定福利である社会保険への事業主の保険料負担は法律によって規定されています。
つまり、社会保険各法によって負担が義務付けられているのです。
まず挙げられるのが健康保険です。
健康保険は民間の労働者を対象とした公的医療保険です。
ある程度の規模を超える大企業の場合は、それぞれ健康保険組合が作られて、そこで働く従業員のための健康保険が運営されています。
会社内での健康保険を持たない中小企業などの事業所では、従業員の健康保険は全国健康保険組合により運営されている健康保険に加入となります。
保険料は、事業主が従業員に支払う賃金をもとに決められる標準報酬月額に、所定の保険律料を乗じることで計算されます。
したがって、賃金が多いほど毎月差し引かれる健康保険料も多くなるということです。
保険料率は、政令が定めた範囲の中で健康保険組合あるいは全国健康保険協会によって決められます。
ただ、保険料は労働者と事業主の折半が原則で、事業主がその半分を負担してくれます。
また健康保険組合の場合は事業主の負担のぶんを多くすることが可能であると規定されています。
事業主が負担するその他の保険料
健康保険以外でも事業主が負担してくれている保険はあります。
日本では20歳を過ぎたら全員が国民年金への加入を義務付けられています。
年金保険では、国民年金の上に被雇用者年金保険が乗るという二階建ての年金保険制度が規定されています。
労働者は、基礎年金に厚生年金保険が上乗せされます。
支払う額は報酬に比例し、保険料は健康保険と同じく賃金に基づいて標準報酬月額に規定された保険率料を乗じて算出されるものです。
この保険率料を規定するのは厚生年金保険法という法律です。
この保険料はやはり事業主と労働者との折半になります。
40歳以上になれば介護保険の加入も義務付けられます。
労災保険(「労働者災害補償保険」)と雇用保険を合わせて労災保険と呼びますが、これらの保険料も、事業主によって負担することが規定されています。
この二つの保険料は「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」の中でまとまって規定されています。
労災保険の保険料は事業主が全額負担することになっています。
また、雇用保険の保険料の中では失業等給付に関する費用は労働者と事業主との折半になりますが、雇用安定事業および能力開発事業に関する費用は事業主の全額負担になります。
これらが代表的な法定福利厚生ですが、その多くが事業主によって保険料負担されていることがわかります。
会社によって違う?法定外福利
このように、それぞれの法律で規定されている法定福利厚生と比較すると、法定外福利はどのようになっているのでしょうか?
法定外福利はその企業によって独自に設けられるものなのですが、実はさまざまな法による規定があるのです。
まず、「雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保等に関する法律」の第6条2号によって、事業主が労働者の性差別を禁じています。
つまり会社側は、労働者の男女の違いによる差別的な対応をしてはいけないということです。
いわゆる「社内貯金」に関しては、労基法18条によって強制貯金の禁止が規定されています。
社内預金というのは労働者の賃金の一部を、一般的な銀行などの金融機関よりも有利な条件で貯蓄することを引き受けるというものになります。
社内預金は多くの企業で普及している福利厚生制度です。
労働者にとって有利な制度ではありますが運用次第では不当な財産搾取などにつながってしまう恐れもあるものです。
そのため労基法では労働者の貯蓄の契約や貯蓄金を管理する契約を禁止しています。
その他にも、寄宿舎や退職給付、育児休暇などについても法律によって規定されている項目があります。
このように、当たり前のように受けている福利厚生制度でもその背景にはさまざまな法律が関わっていることがわかります。
(まとめ)福利厚生は法律で規定されているの?
福利厚生制度のうち、法定福利厚生は社会保険各法によって規定されています。
また、会社の任意で行われる法定外福利厚生も、均等法や労働法などの法律に従って行われなければなりません。
健康保険の保険料率は健康保険組合あるいは全国健康保険協会によって決められます。
したがって、給与額が多いほど保険料の負担額は増えますが、保険料は労働者と事業主とが折半することになっています。
健康保険以外にも、厚生年金保険料は事業主と労働者との折半となります。
労災保険と雇用保険は法律により全額を事業主が負担することが規定されています。
このように、多くの保険料が事業主によって負担されていることがわかります。
法定外福利厚生もさまざまな法律によって規制されています。
例えば、労働者の男女差別の禁止や社内貯金の強制の禁止などです。
会社が任意で行う法定外福利であってもその背景にはさまざまな法律による規定が関係しているのです。